染色をせずとも、美しくやさしい色合いの「茶綿」。
多くの人々を魅了する茶綿の魅力と、
この度 明らかになった新たな機能についてお話しします。

「リブシリーズ」に使用している「茶綿」は、アメリカの生物学者サリー・フォックスさんが、オーガニック農法で、古代の綿の色であった茶色を現代に蘇らせたものです。
現在一般的に流通している白いコットンは、染色しやすいように品種改良されたもので、昔は白いコットンも「茶綿」も同じように栽培していたそうですが、
染色に適した白いコットンが次第に重宝されるようになると、「茶綿」が栽培時に白いコットンと交配されると困ることから、ほとんど栽培されなくなってしまいました。

「茶綿」を蘇らせたサリー・フォックスさんが、2023年の9月に34年振りに来日されました。この来日はサリーさんの強い希望で実現しました。
その際、天衣無縫のお店にお越しいただき、「茶綿」の商品を見ていただいたり、これまでの研究についてのお話しを伺うことができました。

日本橋店へ来店された様子はこちらからご覧ください。

サリーさんは茶綿研究を始めてから2023年でなんと42年目になるそうです。サリーさんと「茶綿」との出会いは突然訪れました。
1981年、当時勤めていた研究所に持ち込まれた”茶色いコットン”を偶然見つけたことが始まりです。元々は、害虫に強い茶綿の性質を白いコットンに備えられないかという研究用に持ち込まれたようですが、研究所では誰も関心を示しませんでした。唯一サリーさんだけが、害虫駆除の為の農薬が要らず、染料を使用せずとも自然な色を持つ「茶綿」に強く惹かれて研究を始めます。

当時の「茶綿」は繊維の長さ（繊維長）が非常に短く糸にできなかったため、より繊維が長いものに絞って交配を繰り返し、改良を重ねていきました。
借りていたビニールハウスだけでは栽培面積が足りず、自宅や別の土地を借りて仕事以外の時間はすべて手作業で交配作業を行っていたそうです。

その後、より繊維が強いもの、色落ちしにくいものなどを選別し交配を重ねたことで品質が向上し、
日本の紡績企業やアメリカのデニムブランドで採用されるようになりました。

ところが、サリーさんの茶綿栽培が有名になると、「白いコットンと交配されると困る」という理由で大規模農場から圧力をかけられ、ついには政府からも立ち退きを求められてしまいます。
やむを得ずカリフォルニア州からアリゾナ州やテキサス州に追われることになりました。

2000年代に入ると取引先の紡績企業が倒産したり、デニムブランドの経営悪化などによって、突如として出荷予定のない大量の茶綿の在庫を抱えることになり、窮地に立たされます。

そこで出会ったのがいくつかの日本の紡績企業で、その一つが大正紡績さんでした。
サリーさんと大正紡績さんとは今日まで20年以上取引が継続できており、その結果日本の消費者に茶綿を使ってもらえることを非常に喜んでいらっしゃいました。（天衣無縫の製品には大正紡績さんの綿糸を使用しています）

今回サリーさんから「茶綿」の効能について興味深いお話がありました。
「茶綿」に含まれるタンニンには抗菌作用があるので、「茶綿」にも抗菌の効能が期待できるというものでした。タンニンの防虫効果で「茶綿」は害虫に強く、有機肥料だけでも十分生育するといわれています。
サリーさんのお話を確かめるため、早速リブシリーズのブラウンを検査に出してみました。その結果、「茶綿」の力を示す結果が得られました。

通常、繊維製品に抗菌防臭効果を持たせるには、化学繊維を使用したり、抗菌剤を原料にコーティングするか練りこんだりすることが一般的です。
天然のコットンだけで、ここまでの機能を持っていることに驚きました。
抗菌防臭は、細菌の増殖を抑えて臭いの元となる成分の発生を抑制するということなので、素肌に直接触れるインナーにぴったりな素材だとわかりました。

また、以前から知られていたのが、紫外線遮蔽率が高いということです。
同じリブシリーズのオフホワイトとブラウンを検査に出してみたところ、確かに「茶綿」の方がより紫外線を遮断することが分かりました。

近年オゾン層は緩やかに増加している一方、紫外線量は依然として上昇しており、日々の紫外線対策は必須事項となりました。
「茶綿」を身に着けることで、自然に紫外線対策ができるのは嬉しい要素です。

ブラウンのインナーを実際にご愛用のお客様からは、様々なご感想をいただいております。
中でも特に「茶綿の魅力」と思われるポイントを、お客様の声とともにお伝えします。